Written by Yuki Takemori

走行時の姿勢制御は体幹を揺らしながらバランスを取ることで解決できる

ライフ 走り方

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走るときにランドセルが左右に揺れることは、
・腕を振らずに体幹を動かすことで解決できる
多くの人は「腕振る→揺れた反動→疲れる」ですがそうではなく、「あばら上下する→体捻らない→自動化」にします。バランサーが連動して肩と講師が同期し、「捻らず、うねらず、溜めず」に動く。

揺れながらバランスを取る

腕を振る目的はバランスの保持

よくあるランニングフォームは上半身を捻るように左右に振るのですが、それは後ろに倒れそうになった胴体を腕を振ることで前にもってくるためです。

たしかにフルマラソンや110M走の競技場であれば問題はない。

理由は簡単で、手入れされたことで安心と安全が確保されていて、

  • わがまま
  • 気まぐれ
  • お坊ちゃま
  • お嬢さま

でいることが可能であるからです。

とはいえ、実社会で災害や犯罪現場からいち早く逃げなくてはいけないとき、すべてを捨てなければならない犯罪現場とは違って、最低限度の生活を成り立たせるための荷物は持たなければならない災害のときにはケガや痛みの原因になるので、まったく役に立ちません。

ランドセルを背負ったまま走ったことがある人であれば経験があると思いますが、左右に手を振るとランドセルもつられて左右に揺れます。そのときに、たとえば右手を振ったあと左手を振りますが、

右に進もうとするランドセルの動きの成分がブレーキとなり、左手につられて左に捻れる胴体の動きとぶつかることでバスンバスンと音をたてて揺れる

のです。

とはいえどうするのかというと、

腕を振らなければいい

のですが、「これでは走るどころか歩けなくなる」ともしや思ったかもです。

しかし問題なしです。

腕ではなく体幹でバランスを取ればいいから

です。

「体幹は硬くて動かない」と思っているかもですが、体幹を

  • 骨盤

に分けることで、手を使わなくてもバランスを取りながら「走る・歩く」ことが可能となります。

人体の三大バランサー

人間の体には3つのバランサーがあります。

  • 頭蓋骨
  • 肩甲骨
  • 腸骨

です。

動作球と球体関節の関係

この3つがそれぞれの球体関節といっしょに動作球を描き出します。
動作球は元になる球体関節があって、

  • 頭部動作球→頭蓋関節
  • 胸部動作球→肩関節
  • 下腹部動作球→股関節

です。

体幹内リンクと動作球の連動

さらにこれらによって描き出された動作球は体幹内リンクによってつながることで、動作球の連動を可能にしています。

頭蓋骨における首と頭の関係

頭を落とさないための関節

首と頭の間には球体関節があります。うなずきとかしげる動きのための環椎後頭関節というもので、一番目の首の骨の両端にあるへこみに後頭部が乗ることで

  • 横への回転
  • 前後の回転

ができます。

そこに

左右の向きを変える

ために喉仏の頭の部分を軸に回転する正中環軸関節と、輪っかの第一頸椎を乗せるあぐらの部分である外側環軸関節の2つの関節により、

第一頸椎は頭蓋骨といっしょに回転する

動きが加わることによる3軸方向の動きの組み合わせになります。

そのことによって、頭は球体関節のような動きが可能になることで、頭部の動作球を描き出すことができるのです。

» フライングディスク効果を使えば前進は簡単になる件【答:仙骨を前に出す】

胸部動作球におけるあばらと鎖骨の関係

主体で動くのは「あばら」

肩関節の球体運動は体幹胸部の動作球を描き出すのですが、その主体となるのがあばらです。腕を肩ではなく、あばらから動かすことで、腕を背中から伸ばすだけではなく、肩の動きが

  • 肩関節
  • 肩鎖関節
  • 胸鎖関節

に分かれることで、繊細な動きが可能となるのです。

とはいえ、初めて聞く専門用語ばかりであるので、「できなさそう」ともしや思うかもです。

しかし問題なしです。

鎖骨の内側を触りながら動かすことで

腕は鎖骨から出ている

と腕の認識を変えることができます。

コツは右腕を動かす場合、左手の

親指と小指で掴む

ことで小指のアクセルと親指のブレーキが相殺されてニュートラルになったことが伝わることでより鎖骨の緊張がとれるのでもっと動かしやすくなります。

参考:Weblio 国語辞典

» Weblio 国語辞典

胸鎖関節はへこんだ関節面どうしをはめ込む鞍関節なので、縦と横の二軸の組み合わせで回転運動をすることができます。それだけでなく関節面の間には円形の軟骨である関節円盤があることによって、股関節のような球体関節に近いはたらきをすることができます。

参考:まっちゃんの理学療法ノート

» まっちゃんの理学療法ノート

ちなみに肩鎖関節は、平らな面どうしでつながっているその性質により、ほとんど動かない平面関節でありながら、ボールが浅くへこみにはまるようになっていること、わずかですが前後、上下、左右の3 軸で運動することが可能です。

鎖骨の内側をつかむときと同じように、今度は鎖骨の外側に親指と小指を置くことで(つかむと動かすときに痛いので)動きを実感することができます。

ひじが動くとわかりにくくなってしまうので、手の平を上に向けて、ひじを動かないようにすると簡単になります。

あばらを主体的に動かすことで、胸部に動作球を描き出すことができます。そのことによって、肩関節の球体関節の部分が動作球とお互いに転がるように動きます。

下腹部を動作球にして変化する骨盤

腸骨が脚になる

仙骨を前に出すことで、股関節も同時に後ろから押し出すことができるようになります。

股関節が球体関節であることは「フライングディスク効果を使えば前進は簡単になる件【答:仙骨を前に出す】」で書いたとおりですが、肩の関節のように下腹部の関節も

  • 股関節
  • 仙腸関節
  • 恥骨結合

に分かれることで仙骨と腸骨の間にある仙腸関節が動くようになります。
いびつではありますが仙腸関節はボールがくぼみに挟み込まれたようになっており、骨盤を固定したときに仙骨が

  • x軸:横に転がる
  • y軸:前後のうなずき
  • z軸:左右にねじる

の3軸で動くことができます。

長さにして最低で3mm、角度にして最低で1度という可動範囲の小ささですが、仙骨を固定することによって、腸骨と相対的に球関節のように動くことで、下腹部の動作球として動くようになります。

仙腸関節の動きを前後のうなずきのみに限定したとき、仙腸関節は恥骨結合と連動することで、脚を股関節ではなく腸骨から出すことができます。そのことによって、脚をつけ根ではなく、お腹から上げることができるようになります。

肩関節と同じく股関節の球面が、下腹部の動作は球面上を撥水加工の傘の上を転がる雨粒のように動くように感覚が変わることで、下腹部の動作球を描き出すことができるようになります。

バランサーの主体性が「手を振る」ことへの依存をなくす

ポーズの呼び方へのツッコミはご遠慮いただこうか

「脳みそ君はバカな社長だから、脆くて弱いくせにすぐに出しゃばる便利な手先を使う」

ということは甲野善紀氏は書籍で何度もおっしゃっている。

とはいえなんですが、100M走のスタート瞬間やアニメや漫画のポーズのように、前傾姿勢のまま走るにしても、現実的に胴体を立てて走るにしても、腕の力が推進力になるので腕を振ることは必須であり、それによって起きる体のねじれは避けることは不可能とすることが一般常識です。

しかし、可能ではあります。

  • あばらの動きでバランスを取る
  • 足を内側に半円を描くことでバランスを取る

ことで「実現できるかも」だからです。

あばらの動きでバランスを取る

あばらを動かすと上記の体幹内リンクによる動作球の連動によって、股関節が頭部に近づくように持ち上がります。

立った状態で、手を体幹に沿わせるように持ち上げると、あばらが開いて体が曲がります。
すると、肩が骨盤と同時に後ろに下がりながら持ち上がります。

反対側は肩と骨盤が近づきながら前に出ることで、脚をひっかりがなく上げることができます。
これを真後ろから見ると、前傾姿勢で走る姿を真上から見下ろした状態と同じになります。

横から見ると、下に落とした骨盤を肩甲骨に押し上げるように前に出します。

上から見下ろしたとき、頭部と下腹部の動作球が一直線上になるようにすることで、胸部動作球の連動は、背骨を横に曲げて足を出しやすくするスペースを開けるだけでなく、

  • みぞおちが膝より前に出ることによるパワー
  • 足が体の真下にくるように出ることの安定
  • 上半身と下半身をおへそのあたりで同時に折りたたむことによる「膝抜き」

をすべて、自動的に可能にします。

足の軌道を変えず真っすぐに出すことは、速く走ろうすると足を寄せる人間と四足動物の習性であり、それで失うバランスを取るためのエネルギーの節約になるのです。

その省エネルギーはそのまま動きやすさになるので、長距離走に向くともいえます。「実はなんでも起きる」サッカーなどにいいかもしれません。

ちなみに、腕の開きを小さくし、肩甲骨の動きを骨盤と同期させ前後に限定することで、体幹の動きを小さくすることで、スピードを重視した高機動形態にすることもできます。

足を内側に半円を描くことでバランスを取る

これに対して、長距離巡航のときは速度も同時に求められます。機動性を無視して、そのエネルギーをすべて推力に充てるために背骨の動きすらロスになるので、「8の字の矢印」で体幹を固定します。

とはいえ、上記で書いたとおり、

スピードを上げるほど両足の幅が寄るジレンマが人間にはある

ので、バランスの保持のためのエネルギーをどうやって削減しながら走る姿勢を安定させるのかが課題となります。

それを解決する方法が、

足で内側に半円を描く

ことです。

「背骨の固定しながらも足の幅を維持する」ためのヒントになるのが白鶴拳の構えです。
この中の足の運びがポイントです。
「足で内側に半円を描く」とはいっても、足首をこするように大きく円を描こうとは敢えてしなくてもよく、例えば右足を前に出すときは、

左足にきちんと乗った状態で素早く出す

ことで自然に内側に入るので、「結果として」半円を描くことになります。
さらに素早く体の中心を通って出すことで、重心が移動せずそのまま足を持ってくることができます。

そのことによって、足の幅を変えることなくそれが素早く動くけれども、背骨も動かさないことが可能になります。

ちなみに、足の幅を狭くすると、倒れないように円を大きく描くことで前後の歩幅で接地面を広くしようとするので結果スピードが上がります。下げるときはこの逆で、胴体の倒れる角度と組み合わせることで、無限に連続した調節ができます。

ちなみに

「背骨を固定する」という点では、踵をつけることなく肉球にあたる趾のつけ根と趾先だけの着地で走る「フォアフット走法」にも同じことが言えます。

高速巡航形態ともいえるこれは、骨盤の動きすらも限りなくなくすことで、

  • 足運びの素早さ
  • 足の幅の確保
  • つま先だけでも安定した着地

をする必要があるからです。

そのためには感覚的に下腹部を振動させることで、「超小さなジャンプ」によって足を運ぶことで、「足で半円を描きにいく」ことすらなくすことで実現します。

ブレーキは「膝抜き」で行います。慣性による膝の靭帯や半月板のダメージを防ぐためです。

骨盤の動きを自動化する

いい姿勢は仙骨を前に出すことで、骨盤を前に傾けることによって自動的にできます。

とはいえ、走るときに骨盤は下腹部の動作球として、脚を動かすために動いているので、前に傾いた状態の維持はできません。

そこで、胸骨を引き上げます。
骨盤の前傾とは逆に、胸骨の引き上げをメインにすることで、

  • 振り出すための後傾
  • 蹴り、支えるための前傾

した骨盤を立った状態に戻そうとするはたらきをします。

これを利用することで、骨盤の動作が自動化されるので、股関節の球体も自動で下腹部の動作球の上を転がるだけになることで、脚を上げようとしなくても自然に前に出るのです。

» 手を振らずに走っても速い人の人の特徴

実はランドセルで簡単になる

専門用語のオンパレードになったので、「やっぱりできなさそう」ともしや思ったかもです。

しかし問題なしです。

ランドセルの肩ベルトを背中の高い位置にくるように締める

と、鎖骨が横に広がることで、上記の「胸骨を引き上げる」ことができます。

これは甲冑を着ることで鎖骨の動きが制限されると体が変に動かなくなるので、かえって動きやすくなることと理屈が似ています。

これはリュックサックでも同じです。

ランドセルやデイパックで適度に締めて横に広がった鎖骨は、背骨をつぶすように背中を押し下げるのですが、同時にデイパックの底を前に傾いた仙骨に荷台のように乗せるようにすることで、その重さを感じながら歩くことが、まさに仙骨を前に出すことで骨盤の動きに足がついてくるという「腰から歩く」ことができます。

尾骨メソッドとテールスタビライザー

さらに仙骨を押し出すことによる前傾は、背中側にあるツボをスラスターとして前に押すだけでなく、バーチャルな尻尾によるテールスタビライザー

になります。

  • 現実の犬猫→尻尾の筋肉のはたらきによる背中のアクセルの補助と方向転換の姿勢制御
  • SFアニメ→尾骨と肛門の間にあるツボを「尾骨にあるもの」としてバーチャルに増やしたバーニアスラスター

によって、スラスターを(ロケットのあれ)

  • 立てて背中側から噴射→加速
  • しっぽを股に入れて前に噴射→減速
  • 尻尾を振った向きと反対側に体が向く→方向転換

が可能です。

ちなみに尾骨の背中側にも同じ「長強」という名前のツボがあるので仙骨と同じく前に押す働きもあります

» 尾骨メソッドの解説

まとめ

さて、「ランドセルを左右に振らずに走るにはどうするのか」という回答がようやく出たようです。それは、

体幹を揺らしながらバランスを取る

ことです。

腕を使わずに体幹の中にある関節が描き出す動作球、

  • 頭蓋骨:頭蓋関節→頭部動作球
  • 肩甲骨:肩関節→胸部動作球
  • 腸骨:股関節→下腹部動作球

の連動によって、腕の振りで体を捻ることがなくなるので、ランドセルやデイパックを背負った状態で走っても左右に振ることも、その反動を受けてダメージを減らすことができます。

それどころか、荷物の重さが背中の反りになることで骨盤の前傾と同じように加速、減速、方向転換の自動化ができるので、仙骨を中心に動くといいながらバラけているのにぶつかり合っていたときとは違って、背中と腰が同じはたらきをしながらもそろって動くことが可能となるのです。

参考資料