Written by Yuki Takemori

つま先とかかとの入れ替え動作がフォアフット走法を安定させる

ライフ 走り方

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短距離走のコツは「つま先着地」で走ることだというけれど、どうしたらいいんだろうか。かかとをつけず走ることはわかるのだけれど、なぜかうまくいかないし、何よりケガをするのが怖い。ケガせず確実にできるようになる方法が知りたいです。

こういった疑問に答えます。

つま先着地をケガなくできるようになるヒントは
・甲出し
ですね。
多くの人は「つま先=足指の先」と思っていますが、そうではなく正しくは、肉球にあたる範囲が正解です。反らせた足首で趾の付け根をかかとからつくように着地することが、趾を体重を支えるアーチと蹴りだすスパイクにする。

かかとをつけない走り方であるフォアフット走法の課題【3つある】

  • その①:不安定である
  • その②:趾の先をつぶす
  • その③:蹴らずに進む力の維持

その①:不安定である

「着地→蹴りだし→着地」をつま先だけで行うので、かかとの支えがなくなるぶん当然不安定になります。

その②:趾の先をつぶす

参考:丹田チャンネル

Amazonレビューで「つま先着地」に対する批判があります。内容をかいつまんで言うと、「爪の裏が内出血し、足裏にマメができた」とのことです。レビューを書いた人のつま先の写真では外反母趾と浮き趾の症状が見られ、おそらくですが、首だけ下を向いたまま趾先に体重をかける前かがみの姿勢で立ったり歩いたりしているのでしょう。

それはともかく、発言している人や書いてある内容を自分の体を観察しながら吟味しないとケガや病気の原因になることは確かです。

その③:蹴らずに進む力の維持

かかとをつけてから上げる動作がないぶん蹴ることに頼らずに進む工夫が必要になります。

これは、趾の先を少し上げることでかかとに力が入るようにして、足裏を地面と平行に浮かせることで歩く「足裏垂直離陸」とも似ています。

フォアフット走法足裏垂直離陸とは

  • 足裏垂直離陸:かかとを後ろから押す→浮かせた足裏を全体で着地する
  • フォアフット走法:趾の付け根を後ろに引く→付け根と趾先で着地する

という違いはあるものの、足のアーチに体重を乗せ、重心を垂直下向きに押すことで体重を支えることは共通しています。

どうやって解決するのか【甲出し】

甲出し

バレエでつま先を伸ばすときのテクです。足の甲を前に出すようにつま先を伸ばすことで、つま先立ちや趾先立ちでバランスが崩れないようにするつま先の使い方です。

やり方

床に長座で座った状態でも立って行ってもよい。

  • 1.かかとをひざ裏に向けて寄せるように上げる

これだけです。とりあえず今は「かかとを固定したまま両端の足指の付け根を後ろに下げればいいのね」ぐらいに思ってもらえればいいです。

かかとと趾の付け根の位置が回転して入れ替わるように伸ばすとやりやすいです。つま先を伸ばしたときに、趾は「パー」を開くように広がってから、小趾から内側に巻き込むようにつま先を閉じる動きによって、趾を根元から揃えて体重をつま先だけでも支えることに必須の横のアーチができるのです。

その横のアーチができると同時に親指側と小趾側の縦のアーチができます。それは趾を伸ばしたまま親趾と小趾の付け根とかかとを同時に寄せあうことで、「内側に巻く」力が発生することで足裏のアーチが三角のバネのようになります。

こうすることで、体重が落ちる位置が足裏のアーチが一番はたらく踵の手前になり、板バネのように体重を押し返すことで支えることができるのです。

フォアフット走法への応用

甲出しの理屈から実現自体はできそうです。

椅子に座った状態で親趾と小趾の付け根をかかとに向けて寄せると自然にかかとが持ち上がります。これがまさに「足の甲を出すことで地面を押す」ことであり、さらに人によっては踵を軽く上げた状態から始めることによって、趾が中趾に集まるように寄りあいながらかぎ爪のように曲がることで、「犬夜叉がアニメで見せたつま先走りはもしやこれかも」と勘づいたかもしれません。

やり方

  • 1.足の中趾を正面に向けて立つ
  • 2.趾を伸ばしたまま甲出しの要領でかかとを上げる
  • 3.かかとをつけずに走る

注意点

足の中趾を正面に向けた状態を維持してください。

このときにつま先が外に向いていると、膝が内側に落ちることで、

  • 親趾の外向きに曲がって変形
  • 足首が内側に落ちて捻挫
  • 膝の内側の腱や靭帯の断裂

になります。

「自分は女性だし、どっちかといいうと内股だから関係ないよね」とここで思った人ももしやいるかもです。
しかし問題ありです。なぜなら

  • 小趾が内側に向かって変形する
  • 足首が外側に落ちて捻挫
  • すねの外側の痛み

の原因になるからです。歩くときにつま先が内側に向いていなくても、膝から下の間を広げて歩いていることを指摘されたり、男子に後ろから「女子ってなんでこの状態で頭を振って歩くんだろう」と見られていたことに気がついた人もいるかもです。

どちらの人も椅子に座っているときに足首を横にねじってつま先を横に向ける癖があるので、まずは立っているときや座っているときは

  • かかとを軽く上げる
  • 中趾を正面に向けてから踵を落とす

ことを習慣にしてください。

この状態から趾先を床につけたままで趾を伸ばした状態から、親趾と小趾の付け根とかかとの3点にできるだけ均等に力を入れて押してください。足裏でテントを作るように足裏が持ち上がってきます。

できない人は、親趾のと小趾の付け根の付け根をかかとに向けて下げると、あしうらの3点が真ん中に寄るような感じで持ち上がります。そこから床を押してください。

この足裏のテントがバレエでいうとことろの高い足裏のアーチによる「土踏まず」となります。この足裏テントは、繰り返しですが、足裏のバネになることで、

  • 趾先立ち→ポアント
  • つま先立ち→ルルベ
  • 床につけて立つ→アテール

以上どの状態でも「土踏まず」は自分の体重を支える土台となります。なのでぜひ習慣にしてください。

たとえバレエをしていなくても、足裏で地面を押して体重を支えることは日常生活でも同じです。

» バランス取りたきゃ床を押せ

甲出しでフォアフット走法の何が変わるのか

参考:お父さんのための野球教室TV【少年野球専門チャンネル】[株式会社リアルスタイル]

つま先着地をしない

上記で紹介したレビュー記事のようにつま先だけ着地で走ることはケガの元になります。

本当にそのレビューの内容が完全なまでに「正解である」というのであれば、Youtubeなどのメディアで会社が放送するなんてありえませんし、登場する大学教授も子どもにケガをする方法を紹介することは考えられません。

とはいえ、フォアフット走法にはそれ以外にも、疲労しやすいとか、骨盤から前傾していなことで前かがみで骨盤を後傾したままつま先だけで着地してケガをした人がいる人も事実であり、その症状は、骨盤が後傾した状態は体が脚よりも後ろにあるので重さによるブレーキの搬送が膝にかかることで、「ひざ下のすねの骨がはがれる」なんていう大けがの元にも確かになります。

しかし、そんなに悪いものならば毎日が狩猟採集で命懸けのケニアに住む人はとっくにしていません。確かに生活習慣から骨盤が前傾しいることが彼らにとっての「普通」ではありますが、そのほかにも違いがあると考えることが自然です。

» オスグッドの痛みをなるべく早く改善する方法と予防トレーニング6選

つま先の範囲は「肉球」

その答えはつま先の範囲にあると私は考えています。多くの人は趾から趾先までを「つま先」としてますが、そうではなく、実際の「つま先」は、趾の付け根から趾先までの部分がつま先であるのです。これはちょうど犬猫でいうところの「肉球」にあたります。

たしかに現代人から見れば、かかとから着地して歩くことが「一般常識」であるので想像しにくいかもですが、日本人の多くは

  • 膝を軽く曲げて
  • 体ごと腰を前に倒して
  • つま立って歩く

ことが普通であったようで、幕末から明治初期の頃に来日したアメリカやヨーロッパ諸国の人が記録に残しています。

実際ラフガディオ・ハーンは、「日常の歩行については人々は皆がみな爪先で歩いている」と記し、さらに「歩くときにはいつもまず第一に足指に重心が乗る。実際、下駄を用いる場合にはそれよりほかに方法がない。なぜなら、踵は下駄にも地面にもつかないから。真横から見ると楔形に先細りした下駄に乗って足は前のめりになって前進する」と記している。

ということは、常にお尻を落として前かがみになっていたわけではなく、状況に合わせて体勢を変えていたと考えるのが自然です。なので、飛脚などの走ることを仕事にしていた人たちはおそらくですが、走っているときの体の状態はケニアに住む人たちに近かったのではないかと思います。

ちなみにバレエにおいてつま先を伸ばすときに足の裏で最も使いたいところが趾の付け根になります。大きな理由としては、足裏全体の筋肉を使えるようにして、アキレス腱を縮めることなくつま先を伸ばすためです。

さらに、逆に使いたくない趾の先を使わないようにすることで、趾が曲がって反らしにくくなったり、親趾側のアーチの筋肉が攣る(つる)ことを防ぎます。さらには、着地の衝撃や体重の荷重で趾が逆折りのまま固まってしまう屈み趾という変形や、爪がはがれるというケガによる障がいを防ぐことができます。

足半が肉球の範囲

足半とフォアフット走法の関係

なぜこう考えるのかというと、「足半」という履物にあります。
草履を半分に切ったような履物で、1950年代までは普通に使われていたようです。
地面につく位置がちょうど趾の付け根の部分であり、趾先は地面につくものの、つま先立って歩くのにはちょうど良かったのでしょう。

さらにいうと足半だけでなく草履や下駄を履くとどういうわけだかつま先が外に向きます。そのまま歩くとふんぞり返った状態でお腹をねじるので着物であれば着崩れてしまいます。なので上記の

  • 膝を軽く曲げて
  • 体ごと腰を前に倒して
  • つま立って歩く

ことを、「仙骨を相手に向けて押し出すように腰を前に出す」ことで行います。

足が常に腰の真下にくるようになるので、

  • お尻を落とす:外旋→つま先を開く
  • お尻をつき出す:内旋→つま先を閉じる

はたらきが同時に起きることで、中趾を正面に向けて立って歩くことを可能にします。

この状態で歩くと、かかとをほとんどつけることなく歩く歩くことができるだけでなく、体のかたむきを大きくするだけで、倒れまいと足が素早く出るのでスピードを上げるときも足の力は支える以外に必要ありません。

着地から蹴りだしまでの解説

とはいえなんですが、フォアフット走法は「足裏垂直離陸」のように、付け根と趾先でアーチにした趾で垂直離陸はしていません。

たしかに「着地→蹴りだし」の間にある「→」の部分はつま先立ちであるので、甲出しで寄って曲がった趾が体重を支えているので、「垂直離陸に見える」かもです。

しかしフォアフット走法の場合はあくまでも蹴って前に進みます。

ただし、趾先の爪のあたりにだけ体重をかけるのではなく、「つま先は肉球の部分であり、足半の接地面である」として、「趾の付け根から趾先までがつま先である」ことに認識を変える必要があります。

そのプロセスはこうです。

  • 1.つま先を反らすと趾が伸びるので、そのまま、趾の付け根で「地面を掘る」ように着地する
  • 2.着地の反動で体が前にいくことで、趾の付け根が踵に向けて引かれることで甲が出て、それが同時に趾を寄せながら曲がることで、滑り止めのスパイクとなる
  • 3.かかったブレーキの反動で甲出しになった状態の土踏まずがななめ下に床を押し、横の成分が推力になる

繰り返しですが中趾は正面に向けた状態を維持してください。

中趾を正面に向けることでつま先を立てたとき、親趾も同時に正面に向けることができるようになります。さらにそれは、親趾の先から付け根までのアーチの甲出しにもっとも適した向きになることで、かかとを上げても足を支えてくれるのです。

なお趾を反らすことが足底腱膜による「足裏でつかむ」ことが足の甲を出して高く持ち上げることは残り4本の趾でも同じです。

ちなみにこれはハイヒールを履くときのコツでもあります。傾きがある靴はずり落ちないよう足裏のアーチでつかむことで履いているのです。

足根操作による足動瞑想

手動瞑想というというものがあります。
簡単に説明すると、手の動きを全身にいきわたらせ、その連環によって動き続けることを自覚することでリラックスするという瞑想の方法です。

そのリラックスのために親指のふくらんだ部分の付け根にある手根骨をほぐすことで動作を改善するが目的なのですが、それと同じように足の甲にある足根骨ををほぐすというものです。

つま先とかかとを入れ替える

これは上記の「甲出し」や別記事でも触れととおり、かかとから足を動かすことで、足の回転の中心がくるぶしから踵の手前になることで、趾の付け根と踵の位置を入れ替える動きになります。

足首を見た目のL字イメージから、骨格によるT字イメージにすると簡単になります。

足根操作による足根骨のゴムラバー化

足根操作は手と同じようにします。

まずつま先を

  • 開く:閉じる
  • 反らす:伸ばす

ことから始めます。

両足同時に踵を上げ下げしてもいいのですが、体側に沿って踵を上げ下げするほうが「足首は踵から動かす」という感覚をつかみやすくなります。

手のときと同じように足根骨を足首と中足骨の間にあるゴムラバー関節にすることで、踵の骨を「6本目の指」のようにすることができます。

このことによって、つま先を伸ばすときは、甲側の中足骨から踵までの関節が開くことで、足の甲が足首の付け根から引き上がると同時に、踵が「6本目の指」になってボールをつかむように親趾と小趾のつけ根といっしょに足の真ん中に集まるように寄ります。

これがつま先や趾先で立ったときに「かかとは下へ押し下げて!」とか「アキレス腱を伸ばして!」というバレエでのアドバイスの意味です。

さらに、ここでは趾は曲げずに、付け根のほうに引っ張るように伸ばしたままの状態でいることでバネのある動きを可能にしているのです。

ちなみに趾の先端を曲げたままだと趾先の曲げ伸ばしの動きだけとなり足裏は働きませんが、かかとを出したり入れたりする動きの中で自然と伸ばしたままになるので、ここでばバレエでいうところのフレックスはしなくても大丈夫です。

繰り返しですが、体側に沿って踵の出し入れを主体に上下すると自動的にできるようになります。

そもそも足根骨とは?

参考:Spalteholz

» 記事はこちら

足根骨は足の甲で足首の近くからかかとまで組み合わさった骨で、7個でできています。
ご存じのとおり足根骨は足裏のアーチをつくることで体重を支えています。

さて、足根骨の間は手根骨と同じように関節です。「手根骨間関節」のように動くわけではありませんが、手根骨のように靭帯でつながっていて、親指側の一部は骨の間にも靭帯があります。

さらにこの7個の骨は手根骨と同じく中央の境目で遠位列と近位列にすることができ、「ショパール関節(横足根関節)」という関節で、着地のときのショックを吸収するためにわずかながらに動きます。

参考:視覚解剖学 Visual Anatomy

足根間関節

骨間楔間靭帯

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参考資料